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皮膚角化細胞を介して発現する食品の機能性解析

Effect of oral administration of the IgE-suppressive wild yeast strain Saccharomyces paradoxus P01 on the development of atopic dermatitis-like symptoms in NC/Nga mice. Kawahara, T., Tsutsui, K., Nakanishi, E., Inoue, T., Hamauzu, Y., BMC Complementary and Alternative Medicine, doi: 10.1186/s12906-017-1606-6, 2017.

 皮膚を構成する角化細胞は 我々の体を外界から守る物理的なバリアである角質の元となると同時に、免疫系の細胞などと相互作用するための多様な応答性を備えています。抗アレルギー食品素材としての機能性を見出したマルメロの塗布による抗炎症作用を評価したところ、種子から得られる抽出物に顕著なアトピー性皮膚炎抑制作用があることを見出しました。この作用はこれまでクインスシードエキスとして知られる保水性に基づくマルメロ種子の機能性とは異なるものであり、皮膚炎の原因となる免疫細胞を遊走させるケモカインの抑制が関係していることが明らかになりました。
 この研究成果により、マルメロ種子の皮膚炎抑制成分を添加した化粧品が開発されました。現在、機能性成分の探索を進めているところです。製品の紹介ページはこちらになります。

ウイルス感染症を日常的に予防できる食品の探索と機能性解明

クロモジ熱水抽出物のインフルエンザウイルス感染抑制メカニズムの検討
薬理と治療, 48(8) : 1357-1371 (2020)

河原岳志, 芦部文一朗, 松見 繁, 丸山徹也

クロモジ熱水抽出物の持続的なインフルエンザウイルス増殖抑制効果

薬理と治療,47(8):1197-1204 (2019)

河原岳志, 芦部文一朗, 松見 繁, 丸山徹也

 インフルエンザウイルスはコロナウイルスと同様に呼吸器から感染するウイルスで、季節性のインフルエンザの原因であるだけでなく、過去に変異ウイルスによる世界的規模のパンデミックを引き起こし、多くの人の命を奪ってきました。また野生の水どりを自然宿主とする鳥インフルエンザウイルスの変異は、将来的にヒトにとって大きな脅威になると予測されています。

 そのような時代背景から、私たちはインフルエンザウイルスをこれからの人間社会における重要な標的と考え、食品の機能性探索研究を精力的に推進しています。2019年からは養命酒製造株式会社との共同研究を行い、漢方薬の原料にもなっているクロモジの抽出エキスに高い感染予防効果があることを報告(信州大学プレスリリース)しました。その作用はウイルスが標的細胞に感染する初期段階である吸着や侵入過程を阻害するもので、一般的な抗インフルエンザ薬とは作用機序が異なることが明らかになっています。この作用特性とウイルス感染に対して予防的に利用可能な食品の利点を活かし、感染対策が重要視される現在において、日常的に利用可能な素材として幅広く利用されることを期待しています。

クロモジ.jpg

「クロモジ」の枝

高級爪楊枝やジン(酒)

原料にもなっています

Inhibitory effect of a hot-water extract of Japanese big-leaf magnolia (Magnolia obovata) on rotavirus-induced diarrhea.

Evidence-Based Complementary and Alternative Medicine, doi: 10.1155/2014/365831:365831, 2014.

Kawahara, T., Tomono, T., Hamauzu, Y., Tanaka, K., Yasui, H.

 ホオノキ(Magnolia obovata)はモクレン科の落葉高木で、樹皮は生薬の「厚朴(和厚朴)」の原料としても有名です。朴の木の葉は「朴葉(ほおば)」と呼ばれ、食物の包装材として伝統的に使用されてきました。朴葉の機能性についてはほとんど明らかにされていませんでしたが、食の安全性に関わる機能性について検討した結果、下痢症の原因となるロタウイルス下痢症を抑制する作用が明らかとなりました。

信州に根差した食品成分の機能性解析

Suppressive effects of hot-water extract of Magnolia obovata on Clostridium perfringens enterotoxin-induced cytotoxicity in human intestinal Caco-2 cells

Planta Medica,86(3):198-204 (2020)

Kawahara, T., Fujii, K., Nakajima, K., Fujii, R., Inagaki, S., Yasui, H.

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放射状に葉が付くホオノキ
朴葉巻きのスタイルには

重要な意味があった?

 抗ロタウイルス作用を明らかにしたホオノキの別研究として行っていたもので、ホオバの抽出液が食中毒原因菌であるウェルシュ菌(Clostridium perfringens)の産生するエンテロトキシンの作用を防ぐという報告です。ホオバには食中毒原因菌自体の増殖を抑制する抗菌作用があることは以前から報告されていましたが、細菌が産生する毒素の働きに対する抑制作用は知られていませんでした。

 ウェルシュ菌は非常に熱耐性の高い状態(芽胞)を形成する細菌で、火を通した鍋の中でもしぶとく生き残り、一部の菌が毒素による食中毒を引き起こすことが知られています。これを抑制する作用が食品包装材として用いられるホオバにあることは理にかなっており、未知でありながらこれを活用してきた人々の知恵には驚かされます。

Bacteriocinogenic lactic acid bacteria Lactobacillus curvatus strain Y108 isolated from Nozawana-zuke pickles. Kawahara, T., Iida, A., Toyama, Y., and Fukuda, K. Food Science and Technology Research, 16(3): 253-262, 2010.

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Y108株によって
形成された
阻止円

 野沢菜漬の保存性に注目し、分離された乳酸菌の抗菌作用について検討を行いました。数多くの菌株からスクリーニングを行った結果、乳酸桿菌の1株(Lactobacillus curvatus Y108株)に抗菌活性が見られたため、その作用物質の解析を行いました。その結果、この物質はペプチド性の抗菌物質であるバクテリオシンの1種であることが明らかとなりました。バクテリオシンは、経口的に摂取された後に体内で普通のタンパク質のように消化されるため、安全性の高い天然の保存料としての期待が高まっている抗菌成分です。これまで野沢菜漬からバクテリオシン産生株が報告された例はなく、その優れた伝統的な保存特性の一端が示されました。

Inhibitory effect of hot-water extract of quince (Cydonia oblonga) on immunoglobulin E-dependent late-phase immune reactions of mast cells. Kawahara, T., Iizuka, T. Cytotechnology, 63(2): 143-152, 2011.

Anti-allergic effect of a hot-water extract of quince (Cydonia oblonga), Shinomiya, F., Hamauzu, Y., and Kawahara T. Bioscience, Biotechnology, and Biochemistry, 73(8), 1773-1778, 2009.

 マルメロ(Cydonia oblonga)は、中央アジアが原産といわれる果実で、長野県諏訪地方を中心に栽培されています。果実は硬いためそのまま食べることは難しいですが、香りが非常に良いことから飲み物などに加工されて利用されています。咳などの喉の症状に良いとされるマルメロ熱水抽出物の抗アレルギー作用を検討した結果、アトピー性皮膚炎モデルマウスの症状軽減作用が認められました。また、即時型(I型)アレルギー反応に関わるマスト細胞の脱顆粒反応に対しても抑制作用があることが明らかとなりました。
 またその後の研究によりマスト細胞の脱顆粒誘導後に起こる遅延相応答(炎症性サイトカインの産生誘導やロイコトリエンC4、プロスタグランジンD2の産生誘導)に対してもマルメロ熱水抽出物は抑制効果を持つことが明らかとなりました。

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カリンでしょうか?
いいえ
"マルメロ"です!

食品のアレルゲン性評価に利用可能な機能性マスト細胞株の樹立

Establishment and characterization of mouse bone marrow-derived mast cell hybridomas. Kawahara, T. Experimenta Cell Research, 318(18), 2385-2396, 2012.

 マウスの骨髄細胞から分化誘導することで得られる骨髄細胞由来マスト細胞(BMMC)は、粘膜型マスト細胞のモデル細胞として広く用いられています。当研究室ではこのBMMCを同系統マウスのマスト細胞腫と細胞融合することにより、機能性を保持したまま不死化した マウスマスト細胞ハイブリドーマ(MMCH)として樹立できることを明らかにしました。
 BMMCは、マスト細胞特有の様々な機能性を持つ反面、生育に成長因子(IL-3) の必要性、分化誘導に要する時間や寿命の問題、培養系での他の細胞の影響を除外できないなどの不都合もあります。 樹立されたMMCHの機能性解析によりこれらの問題の多くが克服できることが明らかになり、その応用が期待されます。

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樹立されたMMCH
(スケールバーは2 μm)

 大学院生 

Abdullah Al Sufian Shuvo D3

田村 紀人 D1​
細見 基  M2​

杉本 大岳 M2

Amee Shusmita Jahan M1

神徳 いずみ M1

原 維吹 M1

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